「たまにあるんだよ、裁判をやってる相手方が逆恨みして事務所に乗り込んでくること。ここでは初めてだけど」
「怖……」
「弁護士はどうしても恨みを買いやすいからね」
思わず口元に手を当てると、彼は苦笑を漏らした。そういうことがあるから、聖さんも室谷さんが来るのを予測していたのかもしれない。
本当に大変な仕事だなと改めて感じていると、瀧さんが意味深なひと言を漏らす。
「それにしても聖のやつ、わざとパンチ食らったんじゃないか?」
碓氷さんはキョトンとし、藤宮さんも「え~?」と半信半疑な声を上げる。
「確かに先生なら避けられそうだけど、わざとだとしたらなんでそんなこと……」
そう言う藤宮さんと同じく私も首をひねると、瀧さんが今警察と話し合っている二階の部屋を指差して自分の考えを話す。
「自分が被害者になれば、ついでにああやって警察にストーカーの事情も話せるだろ。昌ちゃんが費用を払うことなく、代理人の役目を果たせるわけだ。それに、相手には傷害罪が適用される。まあこのくらいでは示談にするだろうけど、お灸を据える意味もあったんじゃない」
「あ~なるほど。六花ちゃんが手を上げられそうになったのも、よっぽど許せなかったのかもしれませんしね」
藤宮さんも納得したように頷いた。



