その日の夜、一緒に夕飯を食べて聖さんを見送ったあと、食器を洗う私の横に母がやってきてなにかを切り出そうとする。
「ねえ、六花」
「うん?」
なんだか改まった様子なので首をかしげると、母は意を決したように口を開く。
「突然だけど……六花は、お母さんが再婚したいって言ったらどう思う?」
その内容が一瞬理解できず、水を流しっぱなしにしたまま固まる。
今、サイコンって言った? さいこん……えっ、再婚!?
衝撃の告白に驚き、思わずお皿を落としそうになった。
「お、お母さん、再婚したい人ができたの!?」
「実はね、前々から考えてた」
母はうっすら頬を染め、恥ずかしそうに身をすくめる。
「ずっと陰で支えてくれていた人なのよ。私だけじゃなくて、六花のことも大事にしてくれるって信頼できる。これからもっと年を取ったときに、彼が一緒にいたらいいなって思うようになったの」
まるで少女のようだけれど、とても愛おしそうに相手のことを語る母から、こちらまで幸せな気持ちが流れ込んでくる。きっと本当に大切にしてくれる人なのだろう。



