「申し訳ありませんが、ご予約のない方のご相談は受け付けられない決まりになっております」
「相談なんかじゃない。俺は昌ちゃんに用があるんだ」
素知らぬ顔で平静に告げる聖さんを睨みつけたあと、彼はアキちゃんに目線を向ける。
「なあ、どうして今日はそんな格好してるんだよ。いつもの昌ちゃんに戻ってくれ。そこの女にたぶらかされたのか⁉」
聖さんの肩越しに私が指をさされ、ビクッと肩が跳ねた。アキちゃんも表情を険しくしてきっぱりと言い放つ。
「この子は関係ない。自分のためにやってるんだよ」
「そんなはずないだろう、男の格好をするなんて……そんな気色悪いことをするのは昌ちゃんじゃない!」
心無い言葉を投げつけられ、アキちゃんは一瞬傷ついた表情をかいま見せた。私の怒りの導線にも火が点き、無意識にぐっと手を握る。
「落ち着いてください。あなたは女性の昌さんに好意を抱いていたのですね」
抑揚のない声でやんわりと確認する聖さんに、室谷さんは「ああ、そうだよ」とあっさり応えた。そして、うっとりするように瞳を細める。



