彼は必死な形相でこちらを見て口を開く。
「昌ちゃん! どうしてこんなところにいるんだよ。俺のところにおいで」
第一声を聞いて背筋が凍った。もしかしてこの人が、ストーカー……⁉
私の隣で、アキちゃんも衝撃を受けた様子で立ち尽くしている。
「まさか、ここまで……」
「やはり来たか。狂気的な方だ」
聖さんも男から顔を背けてボソッと呟いた。しかし彼はそこまで驚いた様子はないし、〝やはり〟と言っているところからして、こうなることも想定していたのかもしれない。
そのとき、一階の奥の部屋のドアが開いてもうひとりの男性が姿を現す。スーツ姿でハーフのような綺麗な顔をした、聖さんと同じくらいの年の人だ。
おそらく、彼と一緒にこの事務所を立ち上げた瀧さんという弁護士だろう。以前聞いた特徴と合致している。
瀧さんは今の状況を見回し、「何事?」と声を漏らして眉根を寄せる。
「すみません、荷物を受け取っている隙にその方が押し入ってきて……!」
「大丈夫、私が対応します」
焦りを滲ませやや泣き出しそうな藤宮さんに、聖さんが凛とした声を投げかけた。そして、私たちを守るようにして室谷という男と向き合う。



