「昌さんを女性だと思っていたなら、男性の姿の衝撃は大きかったことでしょう。さらに、女性と親しげにデートしているところを目撃すればなおさら。逆上して予想外の行動を起こすことも十分に考えられます。つきまとい行為は重大犯罪にエスカレートする可能性が高いとも言われていますから」
彼の指摘に、私はぞっとした。危害を加えられるかもしれないと、最悪の展開が脳裏をよぎる。
さすがのアキちゃんも彼の言葉で危機感を覚えたらしく、「……わかりました。お願いします」と頭を下げた。
ひとまず、警察へ行くにしても今は里帰り中なので家族にも相談してからにしたほうがいいだろうという話になり、相談を終えた。なにかあってからでは遅いし、とにかく慎重に行動してほしい。
相談室を出て三人で一階に降りていくと、玄関のほうから声がする。どうやら宅配便が来たらしく、藤宮さんが荷物を受け取っているようだ。
「きゃっ⁉ ちょっと、お待ちください!」
突然、藤宮さんの驚きと焦りが交ざった声が響き渡る。配達員が出ていくのと入れ違いで、誰かが事務所の中へ入ってきたらしい。
碓氷さんも呆気に取られる中、その人物は私たちの前を行く聖さんの前に立ち塞がった。眼鏡をかけて髪もモサッとした、オタクっぽい印象の男性だ。



