若干気まずさを感じたのはつかの間で、すっかり弁護士モードになっている彼がアキちゃんをまっすぐ見つめて話し出す。
「お話を聞いた限り、確実につきまとい行為にあたりますね。ストーカー規制法の罰則対象となりますから、警察に相談すれば犯人へ行為をやめるように警告がなされます」
「そうなんですか。警察って、事件性とか緊急性がないと動いてくれないんじゃ……」
「ええ、事件性を感じさせればいいんですよ」
いまいち意味がわからず首をひねる私たちに、聖さんは含みのある笑みを浮かべる。
「たとえば〝ゴミが置いてある〟では危険性を感じないが、〝不審物がある〟と言えば違うでしょう。それと同じで、ただ〝困っている〟というだけじゃ警察は動けないが、〝身の危険を感じている〟と言われれば動かざるを得なくなる。物は言いようです」
そ、そういうことか。確かに言い方を少し変えるだけで、印象はかなり違ってくる。ちょっと屁理屈っぽい気もするけれど。
同じことを思ったのか、アキちゃんが口元に片手を当てて呟く。
「ほんと弁護士先生って……いや、なんでも」
「なにをおっしゃりたいかはなんとなく想像がつきます」
にこりと微笑む聖さんは、〝弁護士は口が上手い〟と言われる所以をよくよく理解しているようだ。



