「あなたが水篠先生の義妹さんですか。お話は聞いていました」
「はじめまして。吉越といいます」
「藤宮です。お会いできて嬉しいです。とっても可愛い義妹さん~」
とても明るくて気さくな藤宮さんのおかげで、なんだか美容室にでも来たかのような気分になってくる。緊張が解されて口元を緩めていると、彼女はアキちゃんへと視線を移す。
「しかも……素敵な彼氏さんまで~!」
「違いますよ」
目を輝かせる藤宮さんに私たちが否定するより早く、背後から声が飛んできた。
振り向いた先にいるのは、もちろん聖さんだ。唇は弓なりになっているし目も細められているのに、笑っていないのがわかる。
「彼氏ではないよね? 六花」
「う、うん」
なに、この圧。たとえ彼氏だとしてもそう言わせないほどの威圧感を覚え、私は口の端を引きつらせた。
またアキちゃんに威嚇したらどうしよう、という不安が一瞬よぎったものの、聖さんは誠実な面持ちで彼に向き直る。
「四季咲でお会いした以来ですね。その節は失礼いたしました」
「いえ、こちらこそ今日はお時間を取らせてしまってすみません」
真摯に頭を下げ合うふたりを見て、私は密かに胸を撫で下ろした。よく考えれば、聖さんは仕事中なのだからそれ相応に接するだろう。



