「聖さん……!」
『どうした? こんなとこに電話かけてくるなんて』
声の調子から心配しているのがわかる。きっと碓氷さんが私の名前を口にしたのを聞いていて代わったのだろう。彼と直接話せる安心感は大きく、私はひとつ息を吐き出した。
アキちゃんが数日前から男性につきまとわれており、一緒にいるので相談しに行きたいと簡単に伝えたところ、不機嫌そうな声が返ってくる。
『ふたりで会っているのか? 今』
「……それは置いといて」
ストーカーの件よりそっちを気にする聖さんに苦笑がこぼれた。結局ふたりで会っていたことはばらしてしまったけれど、今はアキちゃんの問題をなんとかしないと。
数秒の間を置いて、考えを決めたらしい彼が『わかった』と応える。
『今日は六時までに全部の案件を終わらせるから、そのあとならいいよ。人の多い道を通って、ふたりで事務所においで』
「ありがとう!」
時間外にもかかわらず相談を受けてくれる彼の心の広さに感謝して、通話を終了した。私が電話するのを驚いた様子で見ていたアキちゃんは、申し訳なさそうに微笑む。



