「今日は男の格好だから気づかれないと思ったのにな……。りっちゃんを怖がらせたくなくて黙ってたんだけど、結局気にさせちゃってごめんね」
「私のことはいいから。それよりアキちゃんが心配だよ。警察行ったほうがいいんじゃない?」
「警察はきっとこれだけじゃ動いてくれないよ。相談だけで終わっちゃうはず」
確かにそういう話も聞く。でも、なにもせずもっとエスカレートしてしまったらシャレにならない。
危機感を募らせていると、アキちゃんは私を安心させるようにあっけらかんと言う。
「りっちゃんは知らないだろうけど、オレそんなに弱くないから。いざとなったら男の力出せると思う」
「そんな状況になってほしくない~」
頭を抱えて唸る私。アキちゃんは運動神経もいいし逃げられるかもしれないけれど、危険なことに変わりないんだから。
どうしたものかと頭を悩ませていたとき、はっとある人の存在を思い出して背筋を伸ばす。
「そうだ、こういうときこそ!」
キョトンとするアキちゃんをよそに、私はバッグの中からスマホを取り出した。
電話帳をスクロールして見つけたのは水簾法律事務所の番号。頼りになる人が身近にいたではないか。聖さんならなにか力になってくれるかもしれない。



