家庭教師を始めた頃から、彼は毎年誕生日にケーキを買ってきてくれる。だから忘れられているとは思っていなかったが、今年は特に確認しておきたい。
「今年もお祝いしてくれる?」
「そのつもりだけど」
当たり前のように返す彼に嬉しさが込み上げるも、ついでに緊張も増して口ごもってしまう。
そんな私を不思議に思ったらしく、聖さんは私の顔を覗き込んでくる。間近に整いすぎたお顔が迫って、ひと際大きく心臓が揺れ動いた。
「どうした、なにか欲しいものでもある?」
──欲しいのは、聖さん自身なんです。
なんて、そこまでストレートには言えないけれど、二十歳になったら勇気を出して告白しようと決めている。未成年のうちは断られる可能性が高そうだったから、ずっと我慢していたのだ。
もちろん、成人したからってOKされるわけじゃない。聖さんは誠実な人だから、適当な気持ちで付き合ったりもしないとわかっている。
ダメでもいいのだ。とにかく溢れそうなこの想いを伝えなければ、次に進めそうにない。
逸る気持ちを落ち着けて、平静を装ってこくりと頷く。
「……うん。当日に言うね」
「当日?」
わずかに首をかしげた聖さんは、棚の上に置いてあるカレンダーを見やる。どうやら誕生日の曜日を確認しているらしい。



