義兄の純愛~初めての恋もカラダも、エリート弁護士に教えられました~


 就活は幸いにもスムーズに進み、先月内定をもらったばかり。ハースキッチンの本社は軽井沢にあるので、家から通えるのがありがたい。

 そういうわけで、私はもうすぐ短大を卒業し、聖さんのお世話になることもなくなるのだ。


「でも、私も社会人になったら、もう少し聖さんに近づける気がする」


 希望を抱いてそう呟くと、彼は優しい笑みを浮かべる。


「今だってこんなに近くにいるだろ」


 甘さを含んだように感じる低い声が耳に届き、ドキリと胸が鳴った。今になって、肩に寄りかかれるくらい彼が近くにいるのを意識してしまい、半身が火照りだす。

 ……違うんだよ。物理的な距離じゃなくて、心も近づきたいの。自立した社会人になれば、少しは私も女性として意識してもらえるんじゃないかって思うから。

 もどかしさを抱きながら、私のテキストを捲っている彼に声をかける。


「ねえ、聖さん」
「ん?」
「来月、私二十歳になるの」


 自ら宣言すると、聖さんはこちらに顔を向けてすぐに返す。


「十二月十五日だろ。毎年お祝いしてるんだから、もちろん覚えてるよ」