「わ、私は……」
目を泳がせる彼女をじっと見つめて待っていたものの、その口から答えが出ることはなかった。あからさまに話をはぐらかし、俺が干渉するから彼氏ができないだの、もう子供じゃないだのと文句を言い始める。
わかっているんだよ、そんなことは。好きな女が奪われそうだから心配しているだけだ。
こちらも徐々に感情が高ぶって、その本心が口からこぼれる。
「俺は六花を子供だとも、義妹だとも思っていない」
彼女の澄んだ瞳が、ゆっくり大きく見開かれた。どういう意味かを察しただろうか。
そのとき、前方から突然目が眩むような明かりが差し、六花は顔をしかめた。次いで、頭痛がし始めたのかこめかみに手を当てる。
今のハイビームになっていたライトのせいか。カメラのフラッシュが苦手なのは知っているが、強烈な光もだめらしい。
この謎の症状の原因は、俺には見当がついている。しかし、六花にそれを教えるつもりはない。知ったところで、余計に苦しくなるだけだろうから──。
とにかく早く帰宅することにして、車を走らせた。今日一日お祝いムードの両親に出迎えられる頃には頭痛も治まってきていたようだったが、先ほどの話の続きはせず休ませた。
想いを伝えるのはまたおあずけになってしまった。もどかしさが募るが、焦ってもいいことはない。
六花のことを一番よく知っているのは俺だと自負している。その絶対的な自信が、嫉妬心をなんとか和らげていた。



