「そんなんじゃなくて……義兄妹、でしょ。だって──」
ぎこちなく口角を上げてなにかを言いかけたとき、油がじゅわっと音を立てると同時に「あっつ!」と六花の声が響いた。
油が跳ねたのだとすぐにわかり、右手をかばう彼女をシンクのほうへ引き寄せる。
「早く冷やして」
「大丈夫だよ、ちょっと飛んだだけだから」
「だめ」
彼女が逃げないようバックハグをするような状態で立ち、右手を取って流した水にさらす。おとなしくされるがままになる彼女は、困った顔を火照らせている。
……また〝義兄妹〟か。六花は事あるごとに、俺を避けるかのごとくその言葉を使う。
いや、もしかしたら自分自身に暗示をかけるためかもしれない。俺と家族でいなければという思いに囚われて。
六花はいつまでもこんな上っ面な関係を保っていられるのか? 情けないが、俺は無理だよ。
自分の中の意地悪な男の部分が顔を出し、左手を彼女の細い腰にするりと回す。
「こんなふうにしても、義兄妹だって言える?」
同時に耳に唇を寄せて囁くと、華奢な身体がびくりと震えた。



