同居し始めてから何度か彼女の料理をいただいたが、その腕は雪乃さん譲りでとても美味しい。俺は食には詳しくないが、きっと栄養バランスも考えられているのだろう。
今日の豚肉と大葉が巻かれたロールカツも、中心にチーズがとろけていて見た目もいい。カットされたそれをひとつ摘まんで、「つまみ食い?」と呆れたように笑う六花をよそにかじってみた。
サクサクの衣とまろやかなチーズに、六花お手製のソースが絶妙に絡み合う。
「ん、すごくうまい。店開けるよ」
「褒めすぎ」
舌鼓を打つ俺に、彼女は謙遜しつつも嬉しそうに笑った。
なにげないやり取りに幸せを感じる。いつからだろう、ただ勉強を教えている女の子じゃなく、ひとりの女性として愛しく想い始めたのは。
「こうしてると新婚夫婦みたいだな」
いつか本当にそうなればいい──なんて心の片隅で願いながら、茶化すように言った。
六花はぴくりと反応し、みるみる頬を赤らめる。しかし、その表情にはどことなく悲しげな色も交ざっているように見えた。
わずかな引っかかりを覚えて注視していると、彼女はふいっと顔を背けて揚げ物を再開する。



