「俺がなんでα9に入ろうと思ったか、本当の理由はまだ皐月にも話してなかっただろ」
「…会社のため…、でしょ、」
「ちがう」
蘭さんは優しく笑っていた。
揺れる瞳を誤魔化さず、けれど嘘のない笑顔で。
「楽しそうだったから。こんな危ない街を駆けるお前たちが……楽しそうだったからだよ」
それだけでいいんだと思う、理由なんて。
仲間に入れてもらいたい理由なんて。
こんなふうに単純なものが一番いい。
「…ただ友達になりたかっただけなんだ、本当は」
俺は友達が居なかったから───。
無愛想だと見られがちな彼は、きっとそれまで誤解されることも多かったんだろう。
「だからお前らが居る限り、α9も睦月も……死なねぇよ」
終わってなんかない、変わってなんかない、ずっと守りつづけた五十嵐 侑李。
同じものを新しく作ることで継続させようとした鹿野 皐月。
そう、死んでなんかない。
まるでその背中に今まで背負いつづけていた“過去”が解されたように、ふっと軽い音が響いて私を見つめた。
「ナンバー5、…その依頼主は?」
さっちゃんは覚悟を決めたように笑って、今日はマスクは取り付けず、イヤモニを耳にはめる。
そして彼の象徴であるフードを深く被って。
それだけで周りを動かす合図。
「依頼主は───…鹿野 睦月!!!」
並んだ5人の中に、ひとりぶん空いた隙間。
先陣を走るナンバー1の涙を追いかけるように、青い夜の路地裏を駆けた。
*



