だから今日こうして会えて、それだって彼が会わせてくれて。
私は元気だよって、毎日たのしいんだよって、そんなことを伝えたかっただけだった。
「もう、会いに来ない……、迷惑だろうから、」
「……ごめんなさい」
「っ…、」
ここで謝らないでよ。
どうしてこんなところで謝ってしまうの。
その謝罪が一番に苦しい。
「澪を救ってくれたその人に、よろしくお願いしますって…伝えておいてくれる…?」
「そんなの…っ、もう伝わってるよ……!!」
そのまま荷物すら持たずに喫茶店を飛び出した。
颯の「えっ」という声と、秀平のすすり泣くような音と、ポーカーフェイスをつらぬく蘭さんの物静かさと。
そして、すれちがった寸前に合わさってしまった彼の目。
「泣くな澪…!!おまえは男だっ!!S.Roberのナンバー5だ…っ!!」
のみこめ、飲み込めばいいの。
込み上げてきそうになった悲しみも不安も情けなさだって。
そんなのぜんぶ、ごっくんって。
「私はいま……すごく幸せだよ、お母さん」
って、本当はそれだけを伝えたかった。
ぽつりとつぶやいた言葉は、日が落ちそうな秋の始まる空へ溶けていった。
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