「…そのひとは、優しい人なのね」
「…うん、やさしいよ。神様みたいな人だよ」
壁も屋根もある、十分すぎるお家に匿ってくれて、高校まで行かせてくれて。
いつも転けた私を見放さずに助けてくれるような人。
「澪、私ね……再婚するの」
「…さいこん…?」
「えぇ、このお店を開店した当初から支え続けてくれた人」
どんな顔をすればいいの。
お母さんはもう、新しい家族を作ろうとしてるってことだ。
「…そうなんだ。お父さんもあんな状態だし、お母さんのことは秘密にしておくよ」
「…うん。ありがとう」
最後まで“ごめんね”は無かった。
それは彼女は別に悪いことをしているとは思っていないからだ。
そうだ、よくよく考えたら悪いことじゃない。
ただ自分の幸せを選んだだけ。
「でも私はお母さんと今日…、そんな話がしたいわけじゃなかった……」
「…そう、よね…」
雑貨屋さんとか、ずっとやりたかったとか。
お父さんとお見合い結婚だったとか、縛られてたとか、そんなのどうだっていい。
結局お母さんが家を出ていったってことは、私たちに不満があったからってことなんだから。



