「ねぇお兄さん1人?もし暇だったら一緒に───きゃあっ!」
ぶわっと舞い上がった風によって女の短いスカートがふわっと捲れる。
やーん、なんて鬱陶しい声に耳を傾けている暇があるなら僕は秀平の呑気な話を聞いていた方がマシだ。
僕より年上だろう女からの誘いも駆け抜けるように断って全力疾走。
「はぁっ、はっ、蘭くん…!ミオ、ミオが居なくなった…っ、」
残るは頼れるナンバー2しかいない。
蘭くんは僕がα9にいた頃からのメンバーで、僕ら以外の初めてのメンバーと言っても間違いでは無かった。
どうしてこんな頭が良くて年上の人が入団希望なんだろ…って、最初は不思議に思ったっけ。
『あぁ、澪なら父親のところへ行くと言ってた』
「……え…?」
『最近忙しそうにしてるお前に余計な心配はさせたくなかったんだと』
だからって蘭くんには話して隊長に隠すってのは許されない。
それに父親に会いに行く…って。
逮捕、されてるはずだ。
もしかしてもう釈放されたとか……?
そしたらミオは父親と暮らす選択しかありえないだろう。
「…ありがとう蘭くん」
『おい、皐月。だけどそれは───』
途切れた会話、ポケットにしまったスマートフォン。
あの子は僕が盗った月だ。
連れて帰る、ただそれだけを思って走った。
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