10分経った時、また着信音が鳴り響いた。


静かな路地に甲高い音がハウリングする。


「も、もしもしっ」


『今どこ?まだ?もう10分経ったけど』


…っ。


家まではあと走って5分ほど。


「もうすぐ着くから…っ。お願い許して…」


ただでさえ走って息切れしているのに、底知れぬ恐怖に襲われて呼吸ができない。
 

苦しい…。苦しいよ真翔…っ。


『あと5分。5分以内に帰ってこなかったらどうなるか分かってる?』


「わっわかった!わかったからっ」


気管からヒュウヒュウ音が鳴る。


それでも走るのはやめられない。


立ち止まったら終わりだ。


電話を切り、ただひたすらに走る。


脇腹は千切れそうなくらい痛むし、膝はガクガク震えているし、呼吸もほとんどできない。


それでも絶対に間に合わなくちゃ…っ。