「フローラちゃんは本当に優しいわね〜……。うちの子たちにも見習ってほしいものだわ!」

「こんなに美人さんなら、あっという間にお嫁さんになっちゃいそうね。この前もお金持ちの人に求婚されてたじゃない。いい人、いるの?」

頼まれた花束を作るフローラの前で、女性たちは話し出す。結婚の話が上がり、フローラは「残念ながら結婚相手はいませんし、する気もありませんので」と微笑みながら返した。

「もったいないわよ〜。フローラちゃんならいい人の一人や二人すぐに見つかるわ」

「フローラちゃんの花嫁姿、きっと綺麗なんでしょうね〜」

女性たちは口々に言うが、フローラは花束を作りながら曖昧に笑う。まだ十七歳のフローラには、結婚など考えられないのだ。

フローラは母子家庭で育ち、愛情を持って育ててくれた母親もフローラが十五歳の頃、病気で帰らぬ人となった。この花屋は、母親が唯一フローラに残してくれた思い出の場所である。この場所を大切にしていたいのだ。