フローラは長い髪が邪魔にならないよう結い上げ、薄い水色のブラウスの上にエプロンを着て、黒いスカートを履いている。ごく普通の服装だが、花に囲まれているだけで男性たちの目には、彼女が花を愛でる女神に見えるのだ。

「順番にお伺いしますので、少々お待ちください」

フローラはニコリと微笑み、一人ずつ丁寧に接客をして、花を選んでいく。店内には花の女王とも呼ばれるバラ、素敵な香りと色を持ったカトレア、春の花と聞けば真っ先に名前が上がるであろうチューリップなどが並んでいる。しかし、その美しさはフローラを前にすれば霞んでしまう。

「ありがとうございました。またお越しくださいませ」

ペコリと頭を下げ、花束を手にした男性をフローラは見送る。男性は頬を真っ赤にし、どこか鼻の下を伸ばしながら「また来ます!」と言って帰って行く。

男性たちが帰った後、フローラの近所に住む主婦たちが花を買いにやって来てくれる。美しさだけでなく優しい心を持ったフローラは、街の多くの人から好かれる人気者だ。