女性に連れて行かれた先には大きな扉があり、フローラがその前に立つとドアが開く。そこにあったのは、厳かな教会そのものだった。

「花嫁の登場だ!」

「人間なのになんて美しいんだ……」

道の左右に座る参列者たちが、美しく着飾られたフローラを見てヒソヒソと話している。フローラは強引にブーケを持たされ、女性にまた引きずられるように歩かされた。

道の先にある祭壇には、クラウディオがニコリと笑って立っている。そして、愛の誓いを行うのに必要な神父の姿を見た時、フローラは悲鳴を上げた。

神父は衣装を見に纏っているものの、人間ではなく骸骨だった。フローラが周りを見てみれば、幼い頃本で読んだことのある妖たちがこちらを見ている。

「そんなに怖がらないで、フローラ。すぐにこっちの世界での生活も慣れるから。僕も吸血鬼なんだよ。僕のことまで怖がれるのは悲しいな」

逃げようとするフローラを抱き締め、クラウディオが言う。そして神父がカタカタと音を立てながら、口を動かした。

「病める時も、健やかなる時も、愛し合うことを誓いますか?」

「誓います」

クラウディオはそう笑顔で言った後、無理やりフローラの唇を奪う。フローラの言葉は塞がれ、空いた口の隙間から舌が捩じ込まれる。

妖に魅入られた娘は、決して逃げることはできないーーー。