世界の西にあるとある国には、美しいと評判の十七歳の女性がいる。その名は、フローラ・ブーケ。

花屋を開いている彼女は、金糸のような美しい髪にサファイアのような青い瞳を持ち、雪のように白い肌という美貌の持ち主だ。どこかの姫君だと言われても、誰も疑わないだろう。

そんな彼女に多くの人が魅了され、夢中になって彼女を見つめる。だが、彼女に惹かれるのは人間だけではないのだ。

「……見つけた、僕の愛しい花嫁」



午前八時半、街にある小さな花屋「スリジエ」の看板が「closed」から「open」に変わると、数人の客が待っていましたとばかりに花屋に入っていく。

「フローラ、家に飾る花がほしいんだけど……」

「病院に入院している友達のお見舞いに、花束を持って行きたいんだ」

「今度、両親の結婚記念日だから花をプレゼントしてあげようかなって思って」

男性たちは頬を赤く染め、店内に並んだ色とりどりの花の中に立つ女性を見つめ、口々に言う。この女性が街一番、否、国一番と言っても過言ではない美貌を持ったフローラである。