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「た、ただいま………」


ゆっくりとドアを開けて家に入った。


結局、紺くんとご飯食べようと中庭に行ったものの、チャイムが鳴り、食べれなかった……


そこでようやく気づいたのは楓くんのこと。


昨日のミニ拷問も含め、今回は絶対許してくれなさそうだ………


「ふ、楓、くん……?」


「……………」


私が話し掛けてもビクともしない。


「怒ってる………の?」


恐る恐る聞いてみても楓くんは何も話さない。


「で、でも!楓くんだって全然一緒にご飯、食べてくれないし………」


目線を楓くんから外して、口をゴニョゴニョとさせた私。


―――私にとっては一瞬のことだった。


ぎゅっ。


「へっ………!」


あまりにもいきなりのことで変な声が出てしまった。


「…………可愛すぎんの。」


ボソッと呟いた楓くんに耳を傾ける。

「俺ばっかりドキドキさせられて………アイツばっかりと一緒にいて……」


「それに……美雨の上目遣いとか、猫なで声とかほんと、レベチ過ぎ。」


私が理解するのには数分かかる単語がズラリと並んだ。


「一番ヤダのは………アイツに美雨の可愛い顔見せること。」


口を尖らせて子供みたいに言う楓くんに思わず笑みがこぼれた。