わたしはあの頃、常に何かに怒っていた。 例えば、だらだら歩く高校生の群れや、嘘ばかりの物語や、足跡ひとつない降り積もった雪に。 いや、怒っていたというのは羨ましいと思ったことの裏返しだ。 わたしもその高校生になりたかったし、嘘ばかりの物語に入りたかったし、雪みたいに美しくいられたら、どんなに良いだろう。 ぐちゃぐちゃに踏み荒らされた雪に散った鮮血を見ながら、ぼんやり考えていた。