「言ったよね」



不機嫌がすべてを支配する。


蛇に睨まれた蛙みたいに、わたしの体は動かなくなるのに、目の前の瞳は見惚れてしまうほど綺麗で。




「“ちーくん”って呼んだ瞬間、その口塞ぐから……って」




……言われた、何回も。


ちひろくんと初めてしゃべった日も、生徒会で一緒に集まった日も。

でも、そのたびに、なんでわたしだけ? ってなる。だけど、それを聞いても理由なんて教えてくれない。







ふっ、と柔らかい声が落ちる。


ゆっくり瞬いた瞳が色素の薄い唇と相まって微笑んだ。



「塞がれたいなら、呼んでみれば?」

「…っ、」



やっぱり、ちひろくんは、




──────めちゃくちゃだ。