ふっとまた笑った新谷くんが、ちゃんとつけろよ、と念を押してくる。



……新谷くんの笑顔なんて見慣れてるはずなのに、なんだかうまく顔が見れない。

たぶん、さっき繋いだ手のせい。

新谷くんからしたら経験多数のなんてことない行動なんだろうけど、わたしはちがう。
あんなに急に触れられら戸惑うもん、普通。



「じゃあ……わたし、中入るから」


これ以上、ドギマギした感情を抱えていたくなくて、逃げるように背を向ける。


そのまま玄関に向かうはずだったのに、つかまれた腕によってわたしの足が停止した。






「沙葉」



今日はやけに名前を呼ばれるな、なんて思いながら、なに、と振り返らず答えてみる。



「手当て、ありがとな」

「……どういたしまして」



今、ありがとうって言った。
あの新谷くんが。