もしかして、彼方くんも聞いたんじゃ……

だめ、そんなことになったらバレてしまう、わたしが彼方くんに好意があること。

…どうしよう。




「やだー、可愛川さん、大丈夫?」


パタパタと足音がして前を向くと、そこには、掃除の時にわたしを突き飛ばした渚さんがいた。



「やめなよ、みんな。可愛川さんがかわいそうでしょ?」


なぜか味方をしてくれたおかげで、睨まれた子たちがそれぞれ廊下を進んでいく。

あっという間にわたしのまわりは静かになった。




「…あ、ありがとう」

「お礼なんていいの。それより大丈夫?」

「うん…」


渚さん、この間はわたしに相当怒ってたのに。もう怒りはおさまったのかな?

あの時は口悪い印象しかなかったけど、ほんとは、いい人とか…?

じっと見つめてみるけど、ぜんぜんわからない。



「可愛川さん、結構ひどい噂広まってるみたいだし、これからはあまり新谷くんたちに近づかない方がいいんじゃない?」

「え…」

「ほら、これ以上、女子たちを怒らせて、可愛川さんの好きな彼方くんに迷惑がかかったらいやでしょう?」