初恋は海に還らない





「ちょっ……私水着じゃないです!」
「俺も水着じゃねーよ。んな細かいこと気にすんなよ」
「気にしますよ!待って、引っ張らないでっ、服が濡れるっ」
「服が濡れること気にしてるような奴が、飛び込み自殺しようとしてたなんてなぁ」
「うっ」
「はい、せーの」
「わっ」



 抵抗する私に面倒くさくなったのか、洸は私の両脇を掴み、海に向かって放り投げた。


 抵抗虚しく、私は頭から海に落ちる。バシャンという音と水飛沫がキラキラと宙に舞う。ゴポゴポ私の口から酸素の泡が水面に向かって登っていき、水の中は透明でゆらゆらと陽の光がさしている。


 ああ、すごい、すごくきれい。


 浅瀬だったこともありすぐに地面に足をつき、水面に顔を出すと、洸が少し離れた場所で腹を抱えて大笑いしていた。



「ははははっ……!!軽いから随分飛んだなっ!」
「……洸、やったね……」
「やんのか? 海で俺に勝てると思うなよ?」
「やってみなきゃ分からないでしょ!! くらえっ!!」



 もう敬語を使うことも忘れ、私は洸に向かい波に脚を取られながら走る。
 そして、バシャーーーーンと大きな水飛沫と共に、私は洸に向けて水を掛けた。するとそれは洸の顔面に直撃し、洸は鼻を抑え俯く。