初恋は海に還らない





「休み時間とか何してんの」
「……私は、本を読んでました」
「本? 漫画?」
「小説」
「へぇーーーー、ジャンルは?」
「基本何でも読みます。学生の青春恋愛ものとか、ホラーも好きですし、ミステリーもヒューマンドラマも」
「すげぇ、色々読んでるんだな。俺は小説って文字が小さくて中々内容が頭に入らないんだよ。だから、漫画ばかり読んでる」
「勿体無い」
「え」



 私は思わず洸に向かい身を乗り出す。手に持ったままのラムネの瓶の中で、ビー玉がカランと転がった。



「確かに文字も小さくて、それだけで読む気が失せちゃうかもしれないけど、絵と違って文字で一から十まで全てを表現するから、すごく想像力も働くし……こう、グッと引き込まれますよ」
「……ふぅん」
「ミステリー小説の全てをひっくり返すミスリードとか、恋愛小説の繊細な心理描写とか……絵では表現しきれない全てを、文字は表現してくれるんです。美しいんです」
「…………」
「今は人気漫画の原作が小説だったりするので、そこから入ってもいいかも。好きなジャンルありますか? もし特になければ────」
「ちょっと待て。ストップ」



 私がスマホの画面を見せようとすると、洸はこちらに向かい手を翳した。


 ────やってしまった。