初恋は海に還らない




「ばーさん、金払う。そのつもりで来たし。パラソルと適当なレジャーシート貸して」
「何言ってんだい、金はいいから早く行きな! パラソルもシートも勝手に持ってきなさい!」
「けど」
「うるっさい!! 早くいけ!! 孫ちゃんも待ちくたびれてるでしょ!!」
「イテェ!!」



 おばあさんは洸の尻を思い切り蹴る。洸は蹴られた部分を摩りながら、痛みに耐えていた。


 おばあさんは私に向き直ると、にこりと目尻に皺を寄せて笑う。



「今日の海は穏やかでいいよ。泳ぐも良し、眺めるもよし。暑くなったらまた涼みにおいで!」



 背中を皺々の手でバシンと叩かれ、シャッターを開けた入り口から、洸と共に外に押し出される。