洸は躊躇いなく開きっぱなしの戸を潜り、中に入っていってしまい、私は恐る恐る建物の中を覗き込んだ。
「何ビクビクしてんだよ。ただの海の家だ」
「えっ」
「あー、裏口から入ったから分からなかったのか」
確かに、建物の中にはテーブルと椅子が並び、カウンターには手書きのメニュー表がズラリと貼り付けてある。
カウンターの中から、エプロン姿の元気そうなお婆さんが顔を出す。
「なんだい洸、久々に来たと思ったら開店前に。誰なのその子は」
「白澤さんのとこの孫。夏休みはこっちに居るらしい」
「あら!! 白澤さんの!! あらあらあら! それならこれ! 持っていきなさい!」
お婆さんは、カウンターの横で氷水の張ったクーラーボックスに入っていたラムネを二つ洸に渡す。



