一応島の中に診療所はいくつかあるが、総合病院は丘の上の一つだけ。
ここに来るまでの移動手段は、リュウセイが空港から乗ってきたという白い外車だった。元々、本土で購入しておいて、空港到着時に島に届くようにと手配していたらしい。
ふと玄関先で気になったミサは、彼に声をかける。
「リュウちゃん、掛けるのは眼鏡だけなの?」
「ああ。まさかこんなところに芸能人がいるわけないって皆の心理か、さほどバレないんだよ」
眼鏡の彼に軽く片目を瞑られた。
ミサの心臓がドキンと跳ねる。
(昔以上にドキドキしちゃうな……)
中に入ると外来処置室が近いのか、消毒薬の匂いがした。
受付の警備員に尋ね、リュウセイの母が入院する部屋へと向かう。
彼女の部屋は陽当たりの良い個室だった。
ガラリと扉を開けた先、壮年の女性がベッド上に佇んでいた。年を召しているのに、陽に当たって白く透き通るような透明感のある姿に、心を奪われてしまう。
(タエコおば様、ご病気だというのに、相変わらず綺麗……)
病院の浴衣を羽織っているはずなのに、まるで高級な着物のように見えてしまう。


