そうして、リュウセイとミサは島唯一の総合病院へと出かけることになったのだが――。
「リュウちゃん、タエコおばさんのところに行きましょう?」
「懐かしいから、ちょっと何個か買わせてくれ」
ミサの実家の駄菓子屋で、リュウセイが菓子を買いはじめたのだ。
「伊藤商店」の名前の消えかかった看板。狭い店内の中には、所狭しと駄菓子が並んでいる。甘ったるい菓子の香料が鼻腔をくすぐってきた。
飴にガム、ゼリーやグミ、小袋に入ったスナック菓子、珍味、粉末のジュース。
「まだこんなカード置いてるのかよ?」
昔懐かしいカードがぶら下がった玩具も置いてある。
(リュウちゃん、大人になってますます恰好良くなったけれど、昔と全然変わらないな)
名家の子孫でありながらも、子どもの頃から明朗快活。だけど、礼儀正しく振舞う時は礼儀正しい。
目をキラキラと輝かせるリュウセイが、なんだかひどく懐かしくて眩しかった。
「わりぃな、ミサ。羽目を外しすぎた、じゃあ行こうか」
ひとしきり買い物をしたリュウセイが満足してから、病院へと出発した。
昔のように、なぜか彼が手を差し伸べてきて、つい癖で手を重ねてしまったのだった。


