和服御曹司で俳優な幼馴染に、絶対溺愛されてます



 一昔前で時代が止まってしまったような島で、このまま朽ちていくのだろうか。
 彼女はちらりと、店先に置いてあるテレビに視線を移す。
 噂のリュウちゃんの姿が映った。

(リュウちゃん、いまとなっては有名人ね……)

 液晶やプラズマが主流の中、いまだに現存してる凸型のアナログなテレビ。ブラウン管の奥に映る幼馴染の顔を見た。
 小さい頃から身長も高くて、日本人離れした顔立ちの綺麗な男の子だった。
 あだ名はリュウちゃん。
 この島の盟主の子孫であり、何百年も続く老舗呉服店の跡取り息子――だった。
 だけど――紆余曲折を経て、彼はいつの間にかテレビの中の人になってしまったのだ。

(リュウちゃんは夢を叶えた。だけど、私は……)

 胸中を複雑な思いが占める。
 そんな時、ちょうど軒先にぬっと影が差す。

「おい、ミサ、ラムネをくれ」

 男性のようだ。

「はい。ラムネですね、分かりました」

 子どもなら大丈夫だが、上司のことを思い出すので、まだ男の人の顔を真正面からは見ることが出来ない。

(今、相手から呼び捨てにされたような?)

 ひんやりとした透明なラムネの瓶の口を持ったまま、ふと見上げると、そこには――。

「リュウちゃん!?」

「久しぶりだな、ミサ。ほら、ラムネ」

 掌をひらひらさせる飄々とした態度の美青年は――テレビと全く一緒の姿の幼馴染――リュウちゃん本人。

 まさか遠い世界の住人になったはずの彼と、恋を育むことになるなんて――再会した瞬間には思いもしなかったのだ。