船に乗ってすぐのミサは衝撃的な画像をテレビで目撃してしまった。
(ただの熱愛報道なだけで……別にリュウちゃん本人は女優さんと付き合ってるなんて言ってなかった。ちゃんと、私に恋人になってほしいって言ってくれて……)
だけど、気が気ではなかった。
本土について船を降りて――公演の準備時間じゃないかとか色んなことを考慮した後、リュウセイに対して電話をかけてみた。けれど、「お掛けになった番号は現在使われておりません」とかかるだけ――。
よりいっそう不安は強くなった。
都会のビルの巨大なスクリーンでは、彼の熱愛報道が堂々と流れている。しかも、道を歩く人々も同じ話題で持ちきりだ。
(リュウちゃんがホテルをとってくれてたから、まずはそこに行こう)
懐にしまっていたメモをとりだす。
都内屈指の高級ホテル。そこへと向かえば、彼が来てくれるかもしれない。
「あっ……」
だけど運悪く、道行く人にぶつかってしまい、ミサはホテルの名前を記載したメモを落としてしまった。ひらひら舞う紙を追いかけたかったが、人波が多くて、すぐにどこかに行ってしまう。結局拾うことが出来なかった。
(ラインの履歴を見れば大丈夫。ちゃんとホテルのフロントさんに説明をして……)
しかしながら、運悪くスマホもするりと地面に落ちてしまう。
通りすがりの誰かにパキンと踏まれてしまった。
「あ……」
とにかく人が多くて、誰が踏んづけて去って行ったのかも分からない。
ミサの瞳に涙がじわりと浮かんだ。
(私が悪い。仕方ないわ。もう時間は20時過ぎてる。明日にでも携帯ショップに向かいましょう……まずはどこかにホテルをとって……あとは、リュウちゃんは舞台には絶対に出てるわけだし)
財布をすられたりしたわけではない。
大丈夫だと言い聞かせ、ミサは近くのビジネスホテルをとった。
夏だけれど、もう外は真っ暗だ。


