和服御曹司で俳優な幼馴染に、絶対溺愛されてます

 そうして彼の出番になった。
 イントロが流れはじめる。
 いよいよだ。

「じゃあ、行ってくるよ」

 そうして出発の際に、ミサに耳打ちをした。

「成功したら、俺に褒美な」

 彼女の心臓がドキンと跳ねる。
 爽やかな笑みを浮かべ、浴衣姿の彼はステージへと駆け上っていった。

 そうして、曲のはじめと共に、彼が歌いはじめる。
 最初はなんだなんだとなっていた客たちも、次第に歌い手の正体が分かってきてざわつきはじめた。
 騒ぎの中でも、彼のよく通る声が境内に響く。

(リュウちゃんは、やっぱり何をしてもカッコイイ)

 舞台の脇からミサはリュウセイの姿を見た。
 田舎の小さな舞台でも、彼が立つととびっきり素敵な大舞台に見えるのはなぜだろうか。
 活気づく島の皆を見ていると、結婚式場で仕事に精を出していた頃の記憶が蘇ってきて、胸がじんわり熱くなってくる。
 歌い終わった彼が、島の皆に礼を告げた。
 熱気が冷めやらぬ中、彼の声がマイク越しに響く。

「聴いてくれてありがとう。この場を提供してくれた、俺の幼馴染にも、どうか拍手を」

 先ほど彼に言われた台詞。

『ちゃんと今までミサが積み上げてきたものは無駄じゃなかったってことだな』

 もちろん今の盛り上がりはリュウセイの力あってこそだろう。
 けれども――。

(また自分の手で、こんなにも多くの人々に喜んでもらえるなんて)

 無事にステージは盛況に終わった。

「あとは皆、大目玉の花火をぜひ楽しんでくれ」

 だけど、島の皆がリュウセイの正体に気づいてしまった、ここからが問題だ。

(最後まで気を抜いちゃダメ)

 舞台に詰めかけようとする人々を、ひょいひょいよかいくぐりながら、リュウセイがミサに駆け寄ってくる。

「ミサ!」

 彼の大きな手が、彼女の小さな手を掴んだ。
 夏まつりの企画の人や警備の人々との打合せ通り、我々は確保された道を走って逃げることにしたのだ。