和服御曹司で俳優な幼馴染に、絶対溺愛されてます

「ちゃんと着れたみたいだな?」

「うん。自分で着るのは久しぶりだったから。リュウちゃんの言った通り、着替えることが出来て良かったかも」

 彼が持っている盆に目をやった。
 綺麗な硝子で出来た、青と赤の涼し気な切子。添えられた器にはカキ氷が飾られていた。小皿には透明感のある羊羹。
 縁側に誘われて、二人で座ってカキ氷をシャリシャリ食べる。

「おいしい」

 今度は和菓子を摘まんだミサを見て、リュウセイが笑った。

「ミサは甘いのが相変わらず好きだな。俺はカキ氷でいっぱいだよ」

「甘いものは別腹というか……」

 とても広い庭の碧が、風に爽やかに揺れる。
 小さな池に小橋がかかっていて、鯉がぽちゃんと跳ねる音がした。
 もう昼下がりだ。
 食べ終わった頃――彼が彼女の髪を撫ではじめる。

「リュウちゃん、どうしたの?」

「当日は、どういう髪型にしようかなと思って」

 ミサがプロデュースするはずなのに、リュウセイの方がプロデューサーみたいになっていた。
 なんだか撫でられていると恥ずかしくなってしまい、ミサが慌てて返す。

「夏祭りの舞台の時間、花火前の目玉イベントだとかで、そんなに長くはとれなかったでしょう? せっかくだし、リュウちゃんには夏の歌を1~2曲歌ってもらおうかなと思っているんだけど、どうかな?」

「歌か」

 リュウセイが唸る。

「リュウちゃん、歌うの上手だけど、あんまり人前で歌うの好きじゃなかったよね? やっぱりやめようか?」

「いいや、歌を歌ってやっても良い。だけど、条件がある」

「条件?」

 なぜか彼女の身体は、彼の膝の上に乗せられる。しかも、後ろから抱きしめられてしまった。

「ど、どうしたの、リュウちゃん?」

 すると、ミサの耳元でリュウセイが囁く。


「ミサが欲しい」