和服御曹司で俳優な幼馴染に、絶対溺愛されてます

「覚えてないか? 高校2年の時の文化祭でお前が俺の演劇のプロデュースをしてくれたんだ。それで学校でも島の中でも好評になって……試しに県外の芸能学校に行ったら、そこで才能を見出されてさ」

 文化祭のことはよく覚えている。

(私もあの経験があったから、誰かを幸せにする仕事がしたいって、ウェディングプランナーを目指して……)

 リュウセイが爽やかに微笑んできた。

「しかも『跡取りのお前がどうする?』って、俺の父さんが反対してたところに、わざわざ乗り込んで説得してくれたのもミサだっただろう?」

「まあ、あれは高校生の時の若気の至りというか……」

 自分にも血気盛んな頃があったものだと思い出すと、顔から火が噴くように恥ずかしい。

「俺はミサの元気なところが好きだ」

 ミサが好きと言われたわけではないのに――。

(どうしよう……まるで昔みたいで心臓が落ち着かない……)

 彼の大きな手が頬を撫でてきた。
 昔から一緒にいるし、距離感は近かった。だけど、大人になった今も、男女でこんなに距離が近いのは初めてだ。

「もちろん、落ち込んでるミサのことも……」

(落ち込んでるミサのことも?)

 だけど、それ以上、彼は何も語らない。
 月明かりの下、しばらく二人で見つめ合っていると、リュウセイがちゅっと頬に口づけてきた。

「……あ……」

 彼の端正な顔が近づいてくる。
 ミサは思わず、ぎゅっと目を瞑った。唇に柔らかな何かが触れる。そっと瞼を持ち上げた。

(私、リュウちゃんとキスしてる)

 黒曜石のような瞳に、星屑が散らばってキラキラと輝いている。そのまま、吸い込まれてしまいそうな気持ちになった。

 ――子どもの頃に夢見たようなロマンチックなキス。