「せっかくだから、海に涼みに行こうか?」
病院を出て、我々は海に来ていた。
どっぷりと陽が暮れてしまったからか、浜辺にはもう人気が少ない。
磯の香りが爽やかだ。
昔よりも大きくなったリュウセイの手に引かれて、ミサはざくぞくと砂を踏みしだいた。
白波が打ち寄せる場所に、靴を脱いで裸足で二人近づく。
昼間はエメラルドグリーンに輝く海も、夜はディープブルーに揺らめいている。
「母さんの思い付きに巻き込んですまなかったな」
謝罪してくるリュウセイに、ミサは首を横に振って返した。
「ううん」
「母さん、帰り際に余計なことを言ってくるし……」
病室を出た後、玄関まで送ってくれたタエコの姿を思い出す。
(そういえば、リュウちゃんに何か耳打ちしていたかな?)
何を話していたのか聞くのは野暮だろう。
「まあ、ミサに頼めば、俺を最高にかっこよくプロデュースしてくれるだろうな」
満面の笑みを浮かべる幼馴染を見て、ミサは愛想笑いを浮かべた。


