和服御曹司で俳優な幼馴染に、絶対溺愛されてます

「母さん、言われた通り来たぞ」

 リュウセイが声をかけると、女性はこちらを振り返る。
 我々の顔を見るなり、タエコは嬉々とした表情を浮かべた。

「ミサちゃん、来てくれて、ありがとう。島に帰っていたのは本当だったのね」

「そうなんです」

 リュウセイが「母さんは開口一番、俺じゃないのかよ、昔っからミサのことばっかりだな」と少しだけ不満そうだった。
 しばらく三人で談笑を交わす。
 変わらず優しいタエコの姿に、童心に返ったような気持ちになった。
 気づけば、窓辺に夕陽が差し込んでいる。

「意外と元気そうだな……じゃあ、俺達は帰るぞ」

 立ち上がろうとしたリュウセイに向かって、タエコが本題を切り出した。

「待ちなさい、リュウ。あなたにお願いがあるのよ」

「……本題までが長いな、相変わらず……それで?」

「あなたに今度の夏祭りの目玉になってほしいの」

 リュウセイが目を見開く。

「は? そんなのは、マネージャーと事務所を通してもらわないと」

「もう通してもらってるわ」

 苦虫を嚙み潰したような表情のリュウセイとは対照に、タエコの表情は活気づいている。

(さすがタエコおば様、仕事がはやい)

「そうして――」

 次の言葉に、今度はミサが驚く番だった。

「リュウの総合プロデューサーはミサちゃんよ」

 片目を瞑るタエコは、リュウセイとよく似ていた。