そして私は恋する乙女になっとけば良いとわかり自然と楽になった。

なぜなら何もしなくても向こうから告白してくれる事が確定してるのだから。

勝ち確定。人生ぬるゲー。

しかし過ぎる日にち。

告白まだかい?

告白まだかい?

拓郎君が奥手過ぎなのか?

よく言えば慎重なのか?

あたしゃいつまで待ったら良いんだい?

このままじゃ純情乙女から貫禄ババアになっちゃうよ?

12月に入り告白されない事からふと疑問に思いだした。

「上島チャラ男はもしかして私を騙したのかな?純情な乙女心をもてあそんで騙して影で笑ってるのかな?もしそうなら、ぶっころ…」

私は夜な夜な上島の悪口を呟きながら包丁を研ぐ事で理性を保った。

「亜依子!目つき!目つき!顔怖いよ」

日々、三宅麻央に怯えられた。

そして麻央に助言された。

「もうすぐ亜依子誕生日だね、亜依子から勝負決めたら?自分から変わるしかないよ」

『自分から変わるしかないよ』

「確かに!!」

麻央のこの言葉が私に突き刺さった。

グサリと包丁じゃなく言葉が刺さった。

意を決した私は誕生日に松本君をデートに誘った。

「今日はありがとう」

「ううん、僕も誘われて嬉しかったありがとう。あの、その…」

「ん?」

「あ、いや、なんか緊張する…」

一緒に歩いてるとなんか言いたそうにしてるのはわかった。

大人の人がよく聞く今夜プロポーズされる予感って奴なんですよね、これが!

いつでもバッチこい!最高の誕生日にしてやるよ!

18年間で最高の誕生日にしてやんよ!

自分の誕生日だけど最高の誕生日にしてやんよ!

けれど、しどろもどろに会話はするものの中々告白されず、イルミネーションを見て回るのがもうすぐ終わりそうになっていた。

『自分から変わるしかないよ』

麻央の言葉を胸に私が精一杯勇気を出して拓郎君の顔を見て尋ねた。

「私に何か言う事ないの?」

凄いドキドキしながら待つ私。

もうこれ以上は無理!

私凄い勇気出したよ!

頼む!

好きとか付き合ってとか何か言って!

なんなら俺と一緒の墓に入ってくれとでも良いからさ!

私は必死に願った。

すると拓郎君は照れながら私に向かって

「月が綺麗ですね」

そう言った。