純恋歌

しばらく宮島を観光してまわった。

「木刀買いたい木刀買いたい」

「なんで男の子は木刀を買いたがるんかね？」

「護身用よ！いざと言う時の！ね、良いよね？」

「木刀は襲いに行く時しか持たんわ」

父に却下されていた。

その後も食べ歩きをしたりしてると父が思い出したかのように口にしてきた。

「そうそう、お前達に言っておきたい事があって」

「もううんちくはお腹いっぱいよ？」

意地悪そうに私が答えると父は苦笑いした。

「今、お付き合いしてる女性の人が居てさ、結婚を考えてるんだ」

「ふーん。良いんじゃない」

「別に俺に直接関係ないし」

真も冷たく言った。

「そ、そっか…そっか…」

少し寂しそうな父は苦笑いしてた。

それから学校の話しやら世間話しをしばらくして

「ちなみに相手の女性の方は…」

「お付き合いする事になったきっかけは…」

「彼女の好きな所は…」

聞いてもないのに喋る父に

（どんだけ自分の話し聞いて欲しいんだよ！しかも自分の子供になんで恋バナしてんだよ！）

少し引いた目線で聞いていた。

実際、父と離れて暮らし初めた頃は寂しさもあったが中学生になった私は少しずつその環境にも慣れていった。

特に中学校は周りを見ても母親は来るが父親が学校に来て参加するようなイベントも特になく父の必要性がなかった。

なので父と母が今更復縁するとか言われたりもしたら家庭環境がまたガラッと変わり逆に困るだろうなとか思ったりもしていた。

昔は復縁をあれほど望んでたのに不思議なものだ。