一瞬その言葉にドキンとした。

僕は嬉しくて正面を向いたけど、美咲さんの顔はとても悲しそうな顔をしていた。

「だから…ごめん。男として意識してしまった以上もう君とは来れない」

そう言って美咲さんは僕の手を離した。

いつか

いつか

いつか美咲さんは僕に振り向いてくれるんじゃないかって思ってた。

初めてアルバイト先で働く美咲さんを見かけて気になり、いつしか目で追いかけ居なかったら落ち込む自分が居た。

偶然助けに入った事がきっかけで話す事が出来、僕はそれを奇跡とは思わず運命だと勝手に喜んだ。

長い年月かければいつか僕を好きになり付き合えるかもとずっと前から我慢してた。

今まで女性と付き合ってきた経験があったから自分はモテる方だと思っていた。

「泣かないで剛君。剛君が泣くから私も泣いちゃう」

「ごめんなさい困らせて」

本当に好きだったんだ。

この人の笑顔が見たくて一緒に居たくて。

ずっと好きだったんだ。

僕はこの日初めて失恋した。

「今日はありがとうございました」

「ううん、こちらこそありがとう」

「じゃ」

「うん、じゃあね」

「あ、最後に握手してもらっても良いですか?」

「うん」

そう言って最後に握手して別れた。

この日、お姉ちゃんと弟の関係に終わりが来た瞬間だった。

「おーい!顔が死んどるよ」

塾で机に顔を乗せてたら大輔に言われた。

「失恋した…」

「ほ、ほっか」

「慰めて」

「え…えっと」

「それかお前も失恋しろー!」

大輔の首を掴んでギャーギャー教室で叫んだ。

「私達は受験生です!恋愛は後にしてまずは受験に集中して頑張りましょう!」

「………は、はい」

田中さんにメガネをキリッとされて言われた。 

田中さんは白鳥の湖を踊ってるかのような動きをしてたので心なしか少し喜んでるように見えた。