おかしいな。確か二段目の手前にしまって置いたのに。冷蔵庫中探したけど、やっぱりどこにも見当たらない。どこ行っちゃったんだろう。

「藤助兄さん、私のプリン知りませんか?」

 私はリビングで家計簿をつけていた藤助兄さんに訊ねる。すると藤助兄さんに目がいく前に、私の瞳には、兄さんの隣に座っていた菊の姿が目に入った。

 菊の手には……、
「あ……、あっ、あーっ! 私のプリンーっ!??」

 なんで、どうして菊が私のプリンを食べてるの!? せっかく道松兄さんがくれたプリンだったのに……!!!

「ちょっと、それ、私のプリンよ! なんで菊が食べてるのよ」

「はあ? 名前なんか書いてなかったぞ」

「それは、すぐ食べるつもりだったから……」

 天正家ルール・冷蔵庫に物を入れる時は名前を書くこと――を思い返しながら、それでも私は反論する。

 だけど菊はスプーンを動かす手を止めない。とうとう最後の一口をぱくんと大きな口で飲み込んだ。

「あーっ!??」

「ったく、うるっせえなあ。たかが食いもんのことで、ぐちぐちと。大体、ルールを守らなかったお前が悪いんだろう」

 確かに菊の言う通り、私も少しは悪いけど。でも、人の物を食べておいて、それも私の大好きなプリンを食べておいて、その態度、絶対に許せないっ……!!!

 私は空になった容器をわざとらしく見せびらかしてきた菊を鋭く睨み付けながら、心の中で復讐を誓った。