「だって先輩、メッセージアプリのIDとかメアドとか聞いても全然教えてくれないって。有名だよね」

「うん。この間も隣のクラスの子が訊いたけど、断られちゃったんだって」

「その点、私達には強い味方・牡丹がいるもんね!」

「道松先輩とメッセージのやりとりしたいんだもん」

 そんなこと言われても。私だってまだ道松兄さんとは、そんなに話したことないのにさ。

 その上、そんな話を聞かされたら、なおさら自信ないよ。

 それなのにみんなは、
「お願い、牡丹! 渡してくれるだけでいいから」

「そう、そう。それ以上は望まないから、ね?」

 みんなから必死にお願いされて、私は断り切れず結局受け取ってしまった。

 だけど、なんだかなあ……。

 こういうの、良くない気がするんだよね。自分の気持ちは自分で伝えるべきなんじゃないかな。間に誰かを挟むのは、誤解を招くことだってあるだろうし。

 だけど、みんな、道松兄さんのことが好きなんだよね? 好きな人、か。私には一生縁のない話で。ちょっとだけ、うらやましい気がする。

 なんて。そんなの、きっと気のせいだ。だって私は結婚なんかしないで、一人で生きていくって決めてるんだもん。

 私は軽く頭を振ると、みんなから預かったラブレターをカバンの中にしまった。