ははっ、うらやましい、か。だけど現実は、みんなが思っているような感じじゃないと思うんだけどなあ……。

 だけど、そう思っている私の気持ちなんて誰にも伝わらない。みんな、きゃあきゃあと好き勝手はしゃいでいる。

 そんな中、突然、
「ねえ、ねえ、牡丹。道松先輩って、家ではどんな感じなの?」
と質問が飛んできた。

「どうって?」

「だから先輩の意外な素顔とか。教えてよ」

 道松兄さんの意外な素顔、か。なんだろう。道松兄さんは、事ある毎に梅吉兄さんとケンカしてばかりだ。今朝だって、どっちが先に洗面所を使うかで揉めていた。でも、それは意外な素顔じゃないよね。だって兄さん達ってば、学校でも顔を合わせばケンカしているんだもん。

 私が答えられないでいると、みんなは残念そうな顔をした。だけど、すぐにけろりと顔色を変えて、
「ねえ、牡丹。はい」
 そう言って、みんなそれぞれなにかを差し出してきた。それは、どれもかわいい柄の封筒だった。

「なあに? これ」

「なにって、ねえ」

「だから、ねえ」

「牡丹から道松先輩に渡してよ」

「道松兄さんに?」

 封筒の中身は、きっと手紙だよね。道松兄さんに渡す手紙って……。

 え、え。もしかして、これってラブレター!?

 理解した私は、
「なんで私が!?」
思わず大きな声が出ちゃった。

 すると、みんなはお互いの顔を突き合わせてから再び視線を私に戻した。