「梅吉さんに藤助さん、桜文さんに道松さん。菖蒲さんに、それから菊まで……」

 辺りにはいつの間にか天正家の面々がそろっていた。六人とも私の方に寄って来る。

 梅吉さんは私の肩にぽんと手を乗せ、「大丈夫だったか?」そう訊いてくれた。

「お前らなあ、そんなんだからモテないんだぞ。女の子には優しく、これ、基本だからな。
 大体よー、女の子に寄って集って恥ずかしくないのか? ったく、武士の風上にもおけねえなあ」

「武士の風上って、それはちょっと違うんじゃない? だけど女の子に乱暴するのは良くないよ」

「この外道達には少しばかりお灸をすえてやらねえとな」

 じろりと瞳を鋭かせ、道松さんが男子生徒達を睨み付けると、彼等は一瞬の内に顔を青くさせ、そそくさとその場から去ってしまう。

 あまりにも呆気ない幕閉めに、梅吉さんはわざとらしく肩をすくめた。

「ひゃー。怖い、怖い。なにもそこまですることないだろう」

「おい。俺はまだなにもしてないぞ」

「その目付きの悪さだけで十分な破壊力になるんだよ」

「ああっ!? 俺の目付きのどこが悪いんだよ!」

 ここでお約束とばかり額をくっつけ合わせる道松さんと梅吉さんの間に、やっぱり藤助さんがするりと入り込む。