すると私の悲鳴を聞いてだろう、バタバタと複数の足音が廊下から聞こえてきた。

 そして、
「なに、どうしたの!?」
と藤助さんが部屋の中に飛び込んで来た。その後ろには寝ぼけ眼を手でこすっている桜文さんや、はた迷惑そうな顔をしている道松さん達も立っていた。

 藤助さんだけが、
「どうしたの、牡丹!?」
と私のことを心配してくれる。

「あ、あ、あれ……!」

 だけど私はうまく言葉が出てこなくて、無関心そうな顔をしている菊を指差した。

「菊、どうして牡丹のベッドにいるの?」

 藤助さんが訊くと、
「夜中にトイレに起きて、寝ぼけて部屋を間違えた」
と菊はさらりと言った。

「もう、菊ってば。牡丹は女の子なんだから気を付けなよ」

 ちょっと待って、それだけ? もっと怒ってもいいんじゃない?

 そう思っていると菊は気怠げに私のことを見て、
「いちいち大袈裟なんだよ。誰もお前みたいなガキ、頼まれたって襲わないっつーの」

「なっ……!?」

 ひっどーい!! なによ、自分が悪いくせに!

 今度こそ藤助さんが怒ってくれたけど、でも、菊はつんとそっぽを向いて話を聞かない。本当にやなやつ!

 ぶつけ所のない怒りを、どうすることもできなくて。だから私は心の中で思い切り叫んだ。

 いーっだ!!