随分と器用に取ったなあ……って、そうじゃなくて。返してよ、私のパンツ!

 私は必死に下着泥棒の満月を追う。階段を駆け降り、洗面所の前に差しかかった所で、ようやく満月に追いついて……。

「捕まえた!」

 全く、いたずらっこなんだから!

 私はがっしりと満月を両手で捕まえたまま、パンツを回収しようとしたけど。

「あれ、満月。私のパンツは?」

 さっきまでくわえてたよね? もう、どこにやったのよ!

 きょろきょろと辺りを見回すと、
「げっ、菊……!?」
 私のパンツは運が悪いことに、菊の足元に落ちていた。

 菊ってば、いつの間にいたの? 菊は私のパンツを拾い上げ、ジロジロと眺めている。

 よりにもよって菊に見られるなんて……。一生の不覚だ。

「……って、返してよ!」

 私は菊からパンツを奪い取るけど、菊はじとりと私を見つめ、
「誰もお前のおこちゃまパンツなんて興味ないっつーの」

「なっ……!?」

 おこちゃまパンツで悪かったわね……!

 私はパンツを握り締めながら、すたすたとその場から去って行く菊の背中を思い切り睨みつけてやる。

 もう、本当にやなやつ!!

 その上、これまた、いつの間にか背後にいた梅吉兄さんが眉尻を下げ、
「牡丹、俺がもっと大人っぽいパンツ買ってやろうか?」

「結構です!」

 梅吉兄さんってば、ほんっとーにデリカシーないんだから!!

 朝っぱらから最悪だ。今日はこれ以上のことが起こらないといいけど。

 そう祈りながら私はパンツをしまいに部屋に戻って行った。